2008年06月
2008年06月13日
デザインと社長
今日は、「デザインと社長」についてお話してみます。
社長がデザインにどこまで関わるか、というテーマで
お話してみます。
デザインにもいろいろありますが、まずは
インダストリアル・デザインについてお話しします。
インダストリアル・デザインとは、ベタで訳すと
工業デザイン。日本語にもなっています。いわゆる、
商品化・工業化される商品のデザイン、と
考えてください。
例えば、車や電気製品。こうした全ての商品は、
デザイナーが書いた一枚の紙から始まります。
デザイナーは、そのデザインを、頭の中で描きます。
なので、考えれば当たり前ですが、世に走っている
全ての車は、デザイナーの頭に浮かんだデザインが
ベースになっていると考えると、神秘性すら感じます。
インダストリアル・デザイン(以降ID)の場合、
オリジナルのデザインに、結構修正が入ります。
大量生産に向かないとか、この角度を実現するには
コストがかかるとか、ここを別部品にすると
部品点数が増える、などと、商品化に向けて
現実的な選択がとられます。
デザインをとるか?
コスト(つまり利益)をとるか?
この妥協線をどこに引くかで、商品がヒットしたり、
あまり売れなくなったりします。
消費者の目線からみたら分かりやすいですね。
いまいちパットしないデザインや、値段の割に
高級感のあるデザインは存在します。
ソニー時代、こうしたデザインをみて、売れる数字を
予測する天才肌の人がいました。新商品の
デザインサンプルをみただけで、自分の担当の国で、
年間何台くらい売れるかを瞬時に予測するのです。
新人の当初、その能力が不思議でたまりませんでした。
いや、数字予測以前に、商品サンプルを見る目が
自分には全くありませんでした。
そこで、その人に、予測の根拠を根堀り葉堀り
聞きました。返ってきた答えの一つが、まずは
たくさんのデザインを見て、
自分のデザイン感(勘)を持つこと。
そして、いざ、自分が販売するデザインを
初めてみるとき、その瞬間に、全ての集中を注ぐ、
と話していました。
実際、新商品がお披露目される時のその人の眼は、
隣から話しかけるのもはばかられる真剣さが
ありました。
そこから、デザインとビジネス、デザインと
売り上げは密接に関わっていると実感し、
このセンスを磨かないとできるビジネスマンに
ならないのだ、という教訓を得ました。
さて、こうした全ての商品は、最終決断を下す人間が
会社にいます。
デザインのトップの場合もあれば、商品事業部の
トップの場合もあれば、社長まで及ぶ場合もあります。
さて、ここでちょっと話がそれますが、
車のデザインの話をしてみます。
高級車ブランドとして有名な、メルセデス。
彼らに、数年前、大きなデザインの変革がありました。
それは、車の顔を大幅に変えたのです。
車のライトの部分は、車の顔に相当する部分で、
ここのデザインは車のイメージにも大きな変化を与えます。
ここに、従来のライトと全く趣向の違う、丸形ライトを
採用しました。今のベンツをご存じの車好きの方は、
何のお話をしているかおわかりですね。
その大胆な変更を、ベンツの高級感を損なわずに
見事に成功させました。
私の住む地域は、ベンツ&BMW率の極めて高い
地域なのですが、このデザイン変更で、ベンツ率が
かなり増えたのを実感します。
一方、BMW。彼らは、アップセル戦略を採りました。
具体的には、売れ筋の3シリーズの後方ライトを、今までの
路線から少しステップダウンする変更をかけました。
そして、従来のBMWらしいデザインを手に入れるならば、
一つ上のクラスの5シリーズを薦める、という戦略を
とります。
BMWからすると、より5シリーズの売り上げをあげる
利益を求めた戦略だったのでしょうが、
消費者からすると、エントリーモデルのブランドを
かなり変更した形になります。
(ちなみに、BMW所有者の方、私も乗っていたことが
ありますが、FRの魅力はBMWならではで、世界屈指の
車であることには変わりありません。お気を悪く
されないで下さいね)
さて、デザインには、実は正邪をつける物差しは
ありません。主観とセンスの世界です。それ故に、
上記でお話したデザインの話も、白黒で言い切れる
ことばかりではありません。
ただ、一ついえるのは、こうしたデザイン戦略は、
会社の命運に極めて大きく影響を及ぼすということです。
商品が数百、数千、数万となったら、その全てを
社長が決めることはできません。
しかし、デザインマインドを持つだけで、デザインの路線、
ブランド戦略の大きな転換に、敏感に反応することが
できます。
その観点から、私は、社長がデザインに一家言いえる
ことは、社長の必須条件だと思っています。
同じ事は、ウェブデザインにもいえます。
ホームページがどう市場で映っているかは、日本の
オンラインユーザー8千万人にどうブランドが反映されて
いるかを表しています。
いわば、会社の顔です。
市場は、かなり「印象」で判断をします。どんな理論が
並べられても、デザインや全体の印象がしょぼいと、
理論があせてしまいます。
左脳と右脳、両方からのシンクロが、説得力を生みます。
社長とデザイン、起業家とデザイン、2つは切っても
切り離せない、というお話でした。


コマースジャングル代表
礒 一明
社長がデザインにどこまで関わるか、というテーマで
お話してみます。
デザインにもいろいろありますが、まずは
インダストリアル・デザインについてお話しします。
インダストリアル・デザインとは、ベタで訳すと
工業デザイン。日本語にもなっています。いわゆる、
商品化・工業化される商品のデザイン、と
考えてください。
例えば、車や電気製品。こうした全ての商品は、
デザイナーが書いた一枚の紙から始まります。
デザイナーは、そのデザインを、頭の中で描きます。
なので、考えれば当たり前ですが、世に走っている
全ての車は、デザイナーの頭に浮かんだデザインが
ベースになっていると考えると、神秘性すら感じます。
インダストリアル・デザイン(以降ID)の場合、
オリジナルのデザインに、結構修正が入ります。
大量生産に向かないとか、この角度を実現するには
コストがかかるとか、ここを別部品にすると
部品点数が増える、などと、商品化に向けて
現実的な選択がとられます。
デザインをとるか?
コスト(つまり利益)をとるか?
この妥協線をどこに引くかで、商品がヒットしたり、
あまり売れなくなったりします。
消費者の目線からみたら分かりやすいですね。
いまいちパットしないデザインや、値段の割に
高級感のあるデザインは存在します。
ソニー時代、こうしたデザインをみて、売れる数字を
予測する天才肌の人がいました。新商品の
デザインサンプルをみただけで、自分の担当の国で、
年間何台くらい売れるかを瞬時に予測するのです。
新人の当初、その能力が不思議でたまりませんでした。
いや、数字予測以前に、商品サンプルを見る目が
自分には全くありませんでした。
そこで、その人に、予測の根拠を根堀り葉堀り
聞きました。返ってきた答えの一つが、まずは
たくさんのデザインを見て、
自分のデザイン感(勘)を持つこと。
そして、いざ、自分が販売するデザインを
初めてみるとき、その瞬間に、全ての集中を注ぐ、
と話していました。
実際、新商品がお披露目される時のその人の眼は、
隣から話しかけるのもはばかられる真剣さが
ありました。
そこから、デザインとビジネス、デザインと
売り上げは密接に関わっていると実感し、
このセンスを磨かないとできるビジネスマンに
ならないのだ、という教訓を得ました。
さて、こうした全ての商品は、最終決断を下す人間が
会社にいます。
デザインのトップの場合もあれば、商品事業部の
トップの場合もあれば、社長まで及ぶ場合もあります。
さて、ここでちょっと話がそれますが、
車のデザインの話をしてみます。
高級車ブランドとして有名な、メルセデス。
彼らに、数年前、大きなデザインの変革がありました。
それは、車の顔を大幅に変えたのです。
車のライトの部分は、車の顔に相当する部分で、
ここのデザインは車のイメージにも大きな変化を与えます。
ここに、従来のライトと全く趣向の違う、丸形ライトを
採用しました。今のベンツをご存じの車好きの方は、
何のお話をしているかおわかりですね。
その大胆な変更を、ベンツの高級感を損なわずに
見事に成功させました。
私の住む地域は、ベンツ&BMW率の極めて高い
地域なのですが、このデザイン変更で、ベンツ率が
かなり増えたのを実感します。
一方、BMW。彼らは、アップセル戦略を採りました。
具体的には、売れ筋の3シリーズの後方ライトを、今までの
路線から少しステップダウンする変更をかけました。
そして、従来のBMWらしいデザインを手に入れるならば、
一つ上のクラスの5シリーズを薦める、という戦略を
とります。
BMWからすると、より5シリーズの売り上げをあげる
利益を求めた戦略だったのでしょうが、
消費者からすると、エントリーモデルのブランドを
かなり変更した形になります。
(ちなみに、BMW所有者の方、私も乗っていたことが
ありますが、FRの魅力はBMWならではで、世界屈指の
車であることには変わりありません。お気を悪く
されないで下さいね)
さて、デザインには、実は正邪をつける物差しは
ありません。主観とセンスの世界です。それ故に、
上記でお話したデザインの話も、白黒で言い切れる
ことばかりではありません。
ただ、一ついえるのは、こうしたデザイン戦略は、
会社の命運に極めて大きく影響を及ぼすということです。
商品が数百、数千、数万となったら、その全てを
社長が決めることはできません。
しかし、デザインマインドを持つだけで、デザインの路線、
ブランド戦略の大きな転換に、敏感に反応することが
できます。
その観点から、私は、社長がデザインに一家言いえる
ことは、社長の必須条件だと思っています。
同じ事は、ウェブデザインにもいえます。
ホームページがどう市場で映っているかは、日本の
オンラインユーザー8千万人にどうブランドが反映されて
いるかを表しています。
いわば、会社の顔です。
市場は、かなり「印象」で判断をします。どんな理論が
並べられても、デザインや全体の印象がしょぼいと、
理論があせてしまいます。
左脳と右脳、両方からのシンクロが、説得力を生みます。
社長とデザイン、起業家とデザイン、2つは切っても
切り離せない、というお話でした。


コマースジャングル代表
礒 一明